第6章 ファーストコンタクト
「そう思いますか?」
「・・・・・・」
質問を質問で返さないでほしい。
もう今更そんな事は口にはしないが、目であからさまに伝えると、彼はクスッと小さく笑ってみせた。
「そうであるとも、違うとも言えますね」
最初からそう答えてくれれば良かったのに。
そう思う反面、あまり答えになっていないそれに眉を寄せると、彼は更に口角を上げた。
「貴女を連れて行きたい場所は、沢山ありますから」
ああ、聞かなければ良かった。
その後悔は何度目だろうか。
学習能力の無さもそうだが、早く沖矢昴という人間を理解すべきだと、心の中でため息を吐いた。
「ここへ連れて来た理由は、貴女がお考えの通りですよ」
・・・まあ、そうだろうな。
バーボンとのことが無ければ、こんな事来る理由がない。
こちらとしても、工藤邸でされるよりは幾分か気持ちが紛れる気もする。
・・・が、どうやらその必要性を考える時が来たようで。
「それより、もう殴りかかったりはしませんから、こちらに座ってはいかがですか」
「・・・・・・」
そう言いながら彼は、腰掛けるベッドをぽんぽんと数回叩いてみせて。
確かに、さっきまでのような殺気は感じられないが、体が警戒心を解いていない。
これからそういう事をしようという時に体を強ばらせる理由もよく分からないまま、彼が座らせようとした位置から離れたところでベッドに腰掛けた。
「・・・・・・」
視界から彼を外しはしたが、反射物で彼の位置を把握しながら、小さく息を吐いて。
受け取るものを受け取ってから話を進めようと思ったが、それもいつになるか分からない。
「・・・提案があります」
「なんでしょう」
だったらこちらの話を先にしてしまおうと、脳内で考えていた話を1つずつ、彼に話し始めた。