第6章 ファーストコンタクト
「!」
自分の中で整理しきれない感情が溢れ出てしまったせいか、手にしていた皿はスルリと私の手から滑り落ちて。
床に落ちると、当然の如く大きな音を立てて辺りに散らばった。
「す、すみませ・・・っ」
その出来事で、ようやく目が覚めたような気がした。
まるで、さっきまで彼の魔法にかかっていたようで。
「素手は危ないですよ」
慌てて哀れな姿にさせてしまった皿の欠片を拾い集めようとすると、その手は彼の手によって阻まれた。
確かにこういうものが簡単に手を切ることは分かっている。
切り口さえ触らなければ大丈夫だと思ってしまったが、次の瞬間には私を立たせると同時に彼も立ち上がった。
「ホウキを持ってきますから、このまま待っていてください」
そう言って彼が姿を消した後、ようやく冷静になれた。
「・・・っ」
冷静には、なったはずなのに。
心臓が・・・まだ落ち着きを取り戻さない。
落ち着くどころか、おかしくなる一方で。
掴まれるような、そんな感覚。
ざわつきとは少し違うこの感覚は・・・一体何なのだろうか。
ー
「すみませんでした・・・」
「いえ、お気になさらず」
片付けを一通り終えると、早々にポアロを出て彼に頭を下げた。
あの後の時間は、情けなくも殆ど記憶に残っていない。
割れた皿は彼の手によって集められ、私は鼓動を落ち着かせるのが精一杯だった。
「では、また明日」
「あ・・・はい。また」
まだ少し落ち着かないそれだったが、彼のいつもと違うあっさりとした去り際に驚いた為か、1人になると驚く程早く落ち着いた。
「・・・・・・」
何故。
彼に詰め寄られ、改めて告白の言葉を口にされた時・・・そう、思った。
だって、あまりにも彼の目が。
綺麗過ぎたから。
嘘をついているようには・・・見えなかったから。
「・・・っ」
嘘だと、分かっているのに。
そんな事を思うなんて。
・・・情けない。