第1章 朝日は終わりを告げた
「バーボン」
スコッチが始末された、とあるビルの屋上。
そこに彼はいると確信して足を運べば、案の定その男の姿はあった。
「・・・ウェルシュか」
スコッチと彼はよく一緒にいた。
それは単に仕事相手として組んでいた事が多かったのもあるが、それ以上に彼らには別の物を感じていた。
そのスコッチが倒れていた場所を見下ろす彼の背中に話し掛けると、バーボンは背を向けたまま私のコードネームを呟いて。
「悲しんでるの?」
私も、彼らとはよく仕事で組んだ。
ライとバーボン、そしてスコッチ。
バーボンと私は情報係に回ることが多く、彼が得にくい情報を主に私が取ってきていて。
・・・正直な所、スコッチが始末されたと聞いた時、生まれたのは疑問ばかりだった。
「僕が?まさか」
それは始末された理由もそうなのだが・・・始末した人間が、ライということに納得ができていなくて。
「随分と仲が良さそうだったから」
「今となっては後悔していますよ。裏切り者と馴れ合っていたなんて」
そう言ってバーボンは、ようやくこちらに体を向けた。
その時見えた表情は、笑っているのにどこか悲しそうにも見えて。
そしてどこか・・・泣いていたようにも見える。
この男に限って、そんな事は無いだろうが。
「・・・その割には、そんな悲しそうな顔するのね」
「貴女の瞳、何か別の物を映しているのでは?」
挑発気味に言えば、彼も挑発的に返してきて。
彼とは反発する事も多かったが、それなりに仕事は上手くこなしてきたつもりだ。
でも、私と彼とでは決定的に違うことがある。
「私も、他の女性のように上手く扱ってくれると嬉しいのだけど」
ハニートラップを使う事も多い私達だが、そこに大きな違いが。
「ウェルシュ」
「・・・!」
互いに笑顔は崩さないまま睨み合っていると、突然背後から気配薄らに声を掛けられて。
「ライ?」
振り向いて姿を確認し、その名を呼んでは僅かに気まずさを感じた。