第6章 ファーストコンタクト
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数時間後。
ようやく店を閉める時間になり、ドアのプレートをCLOSEへと変えて。
女子高生達はあれから閉店間際まで居座り続け、安室さんとの時間を堪能したようだった。
こちらとしては彼を捕まえておいてもらい、助かったところもあるが。
・・・店として支障が出るのは不本意だ。
せめて彼とは何の関係もないと彼女達に分かってもらえたら良いの・・・だが・・・。
「・・・・・・」
・・・いや、違う。
これから私は、形ばかりではあるが、そういう関係になるんじゃないか。
きっと彼の言葉も嘘ばかりだから。
実感が無さ過ぎたせいか、失念していた。
もし・・・私達の関係が表上そういう関係になり、数ある彼のファン達にバレたら・・・ポアロにとって悪い流れになるのではないだろうか。
無関係なこの店を巻き込むことは不本意極まりない。
赤井さんは、安室さんのファンが少々過激だということを知らない可能性もある。
もしネットに私の顔写真でもばら撒かれたりしたら・・・FBIとしても痛手だ。
・・・こういうデメリットに、今更気付くとは。
「お疲れ様でした」
「お、お疲れ様です・・・っ」
突然横から安室さんに声を掛けられ、肩を震わせながら驚くと、半ば裏返りそうな声で咄嗟に返事をした。
「今日はあまりひなたさんと話せなくて残念でした」
「・・・・・・」
そんな私を横目に、彼は笑顔を向けて。
本当にこの人は、息をするようにそんな言葉を吐くのだな。
若い女子高生は、いとも簡単にこれに騙されるのか。
いや、彼にとっては相手の年齢など関係ないか。
「これから、あの男とデートですか?」
・・・また昴さんの話。
まあ、告白の返事待ちの相手が他の男と会っているのは、気持ち穏やかではないだろうな。
彼もそういうフリをしなければ、普通はこちら側が不信感を抱くだろうから。
本来なら互いにそんな小賢しいこと、必要ないはずなのだけど。
「そうだと言ったら・・・どうしますか?」
一々、真面目に答えるのが面倒だったというのもある。
ついでと言えばそれでもあったが、参考に彼へこう聞けば、どう答えるのか。
単純なる興味で、そう尋ねてみた。