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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第6章 ファーストコンタクト




『声は出すな』
「・・・っ」

電話に出るなり、あの人の声で先に釘を刺された。
久しぶりに聞くそれは、無条件に背筋を引き伸ばして。

どっちみち、ここでは声が出せない。
どこで聞き耳を立てられているか、盗聴されているかも分からないから。

出す予定の無かった声を飲み込むようにグッと口を噤むと、スマホを握る手が静かに湿った。

『任務続行は不服だろうが、ひなたでなくては意味が無いことだ』

沖矢さんにも・・・同じ事を言われたな。

・・・それは、江戸川コナンに対してのことですか。
それとも、バーボンに対してのことですか。

そんな質問をすることも、許されない。

恐らく、どちらに対してもの言葉なのだろうけど。
赤井さんにそう言われてしまえば、彼の言う不服という感情は生まれようもなかった。

『一つだけ伝えておく』

・・・一つだけ。
私からは、いくつも伝えたいことや話したいことがあるのに。

ようやく繋がった電話も、これで終わってしまうようだ。

『自分が壊れる前に、去れ』

そんな邪な感情の中、どこか心が浮いた状態で聞いていたせいか、一瞬彼の言葉の意味が理解できなくて。

・・・いや、瞬時に何度も脳内で再生し直したけれど。
結局理解できないままで。

『・・・無理はするな。何かあれば連絡を入れろ』
「・・・ッ、あ・・・」

赤井さん。
そう、名前を呼ぶこともできない。

『また連絡する』

どういう意味だったのか、何故それだけ電話だったのか。
何も分からないまま。

私の気持ちも心もぐちゃぐちゃにして、彼は静かに過ぎ去っていった。

結局、現状は何も変わらないのに。
いや、これから変えるのだけど。

今は私の心境だけが、あの人の声だけで変えられてしまった。

・・・やはり私には向いていないのかもしれない。

何に、なんて考えたくないことを思い浮かべれば、スマホを握る手に自然と力がこもった。

「ひなたさん?」
「!」

俯き眉間に皺を寄せていると、安室さんが扉から顔を覗かせて。

しまった、と顔を上げて瞬時に笑顔を作ると、小首を傾げて応えた。




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