第6章 ファーストコンタクト
勉強を見る、というのは勿論口実だろうな。
そうでもして会いたい相手ということか。
・・・私には到底理解できない。
トレーに人数分のコップに入った水を運ぶと、彼女の前に1つずつ置いて。
その瞬間に感じた視線は、痛いなんてものではなかった。
彼が人気になるに連れて、私や梓さんへの当たりが強くなっている。
まあ、不都合はないから何も気にする必要はないのだけど。
・・・変に目立ったり、ポアロの評判が下がることだけは避けたい。
「・・・!」
そんな事を思いながら、安室さんが女子高生の相手をしているのを遠目で確認しつつ、片付けの続きをしている時だった。
ポケットに入っているスマホがメールの到着を振動で伝えてきて。
沖矢さんがまた無駄に送ってきただろうか、なんて考えながら、そっとそれを開いた瞬間。
「!?」
心臓が、一瞬大きく震えた。
それは、たった一言のメールで。
『任務続行』
本当に、それだけのメール。
送り主は無いものの、誰からかなんてすぐに分かった。
・・・あの人だ。
そう確信した頃には、もうメールは自動削除されていて。
「・・・・・・」
ほんの少し、あの人の姿が見えたような気持ちに包まれた。
けれど実態も無く、それを再び確認する事もできない。
ただただ、何とも言えない感情が体を襲った。
・・・安室さんが離れた位置にいて助かった。
今は平常的な表情を作ることは難しかったから。
「!」
なのに、追い打ちを描けるように表情は更に崩されていく。
メールを開いていたはずのスマホの画面に、公衆電話からの着信画面が表示されていたから。
安室さんに小さく視線を向ければ、唯一のお客さんである女子高生のグループにしっかりと捕まっている。
・・・今なら、出られる。
そう判断すると、スタッフルームへと駆け込んだ。
「・・・っ、ふぅ・・・」
一気に襲う緊張感を落ち着かせる為に、一度深呼吸して。
僅かに震える指先で、応答ボタンを押した。