第1章 朝日は終わりを告げた
「なら、俺も着いていく!」
そう便乗したのは、毛利探偵で。
きっとこの人は、彼女が若い女性だからだ。
・・・これだから、奥さんと別居する羽目になっているのに、懲りない人だ。
「じゃあ、私も行く・・・!人が死んだ事務所に、コナンくんと2人じゃ心細いし・・・」
そう言って、コナンくんを抱き抱えては毛利探偵に蘭さんが訴えて。
それもそうだ。
彼女も空手の都大会で優勝している実力者ではあるが、普通の女子校生で。
それに、コナンくんは何も言わなくても勝手についていくのだろうし。
「でも僕、ついても行きたいけど、ひなたさんと話もしたいんだ」
蘭さんの腕から、顔を赤く染めながら慌てて逃れると、コナンくんは私の手を引きながらそう言って。
そういえば、彼と話をする約束もしていたな、と忘れかけていた記憶を呼び戻して。
「でもそれだと、定員オーバーになりますね・・・僕の車は5人乗りですから」
よく考えれば、バーボンが車を運転している所を見た事がない。
彼がどんな車に乗っているかなんて、知るはずもない。
私としても、彼から目を離したくない。
口実としては都合が良いけれど。
正直、あの人と連絡が取れた上で動きたかったが。
「・・・じゃあ、私とコナンくんはタクシーで追いかけようか?」
「いいの?」
最初からそうするつもりだったくせに。
という言葉は、グッと腹の中にしまい込んで。
とりあえず外に出ようと、体の向きを変えた瞬間。
「でも僕、ひなたさんの車にも乗ってみたいな!」
「!」
私の背中に向かって、彼がそう言った。
その瞬間、思わず動きを止めてしまって。
「ひなたさん、車持ってるんですか?」
「え、ええ・・・普段は乗りませんけど・・・」
蘭さんの問いに振り返りながら答えたが、思わず動揺が滲んだ。
彼らには隠していたのに。
それに、バーボンには免許を持っていることすら知られたくなかったから、わざわざタクシーを選んだのに。