第1章 朝日は終わりを告げた
「因みに、お兄さんは何で亡くなったんですか?」
彼も、私の視線を追うように樫塚さんへと目を向けると、そのまま彼女に質問を投げ掛けた。
けれど、聞こえなかったのかその時に彼女から返事が来ることはなくて。
「お兄さんの死因は?」
今度は先程よりも声を張り上げて。
安室さんが再度尋ねると、彼女はハッとしたように顔を上げた。
「あ、はい・・・4日前に事故で・・・。これが兄ですけど」
そう言って彼女は、携帯の待ち受け画面を私達に見せてきて。
安室さんと私がそれを覗き込む中、どこからとも無く現れたコナンくんも、食い入るようにそれを見つめた。
「・・・?」
その時、コナンくんが何かに引っ掛かりを覚えるような表情をした事には気がついた。
でも、これの何に引っ掛かったのだろう。
「・・・・・・」
ライターの傷以外にも、気になる点は他にもあった。
男の携帯には、毛利探偵をここから遠ざける為に送った『会う場所を変えたい』というメール以外は、電話帳すらも真っ白だったという。
樫塚さんの証言では、その後のメールは彼女の携帯を使われたと言っていたが。
それに、上着のポケットにはタバコやライターと一緒に入っていたという小銭。
これが全部で5千円近くあった事。
しかも、財布の中身は1万円札が2枚、5千円札が5枚、千円札が47枚もあったという。
まるで細かくしなければ、お金が使えないかのような持ち歩き方だ。
・・・こういう人間を、前にも私は見た事がある。
「家に帰るなら、僕の車でお送りしましょうか?」
彼女が連絡先を書く中、安室さんは樫塚さんへ徐ろに尋ねて。
「近くの駐車場に停めてありますし、もしかしたらあの男の仲間があなたの家の傍で待ち伏せてるかもしれませんしね」
「あ、はい・・・」
・・・以外、だと思った。
正直、ここまで大事になった以上、彼が事件に関与している可能性は低いと思ったが、これ程までに自分から首を突っ込むなんて。
もしかして、本当にこの事件に関わっているのではないかと、疑い始める程に。