第6章 ファーストコンタクト
呼吸の乱れた私の頭を、彼は数回優しく撫でて。
子供扱いするなという怒りすら、言葉にできなくて。
段々と、意識が遠のく感覚に脳が危険信号を送った。
「昴さ・・・」
「はい」
こんな事で意識を飛ばすなんて言語道断だ。
情報を持っていかれるどころか、体ごと持って行かれる。
そんな事・・・FBIの恥以外の何物でもない。
「殴って・・・起こしてください・・・」
「・・・・・・」
だから、そんな事が起きる前に。
まずは耐える為に彼へ、そう頼んだ。
不本意ではある。
が、そんな事を言えた立場では無いほどに、体も何も言うことをきかなくて。
「女性を殴る趣味はありませんよ」
・・・路地裏では不意打ちで殴りかかってきたくせに。
そんな反論の言葉も出てこない。
「意識を飛ばさないことも訓練です」
分かってる。
だからこそ、頼んでいるのに。
そう話をしている間にも、瞼は重さを増して意識がどんどんと遠くへ向かっていく。
もう、口を動かす余力すらない。
情けなさで悔しいのに、拳を握ることもできない。
「・・・でも」
そんな私に、彼は頭を撫でた手で私の前髪を上げて。
露わにされたそこへ、何故か口付けを落とした。
「今日は甘めにいきましょう」
その日の私の瞳に映ったのは、彼の優しい笑顔で。
「おやすみなさい」
最後に一言、彼が私に言った一言がまるで催眠術のように聞こえると、呆気なく私の意識はどこかへと行ってしまった。
ー
「おはようございます」
目覚めは最悪だった。
瞼はパッと開いたが、真っ先に目に映ったのは、昨日最後に見たままの彼の姿だったから。
「体の調子はいかがですか」
「・・・良い、とは言えません」
おまけに、気分まで最悪だと表情で示せば、彼は何故かクスクスと笑って。
「それは残念」
どこか楽しんでもいるような様子に、思わず眉間にシワが寄った。
そんな中、ふと感じた違和感というのか、いつもと違う感覚に体が反応して。