第5章 笑顔と泣顔が行着く先※
沖矢さんも意外と綺麗な瞳をしている。
それを改めて確認しようと、薄ら瞼を開いた時。
月明かりを背にした彼が、何故か物寂しげに見えて。
見間違いか、と顔を向け直した瞬間。
「・・・貴女の全てを知っているのは、僕の方なんですけどね」
彼が、そう呟いた気がして。
「え・・・?」
思わず、聞き返してしまった。
言葉の意味もそうなのだけど。
彼らしくない声色での呟きだったから。
「や、ぁ・・・ッ!!」
けれど、その意味も真意も確かめる間もないまま、彼の指が私のナカを掻き乱して。
ゾワッとする場所を突かれ、思わず声を上げた。
「独り言です」
・・・誤魔化された。
ということは、あまり掘り下げられたくないということか。
だったら口にしなければ良かったのに、なんていうのは勝手な考えか。
彼も無意識で出たのだろうから。
「指を増やしますよ」
そう言われたが、さっきの言葉の方が気になって、身構えることができなかった。
「そのまま・・・」
・・・いや、彼のこの言葉を信じるならば、身構えなかったのは正解だったのかもしれない。
「・・・っん、ぅ・・・!!」
身構えていれば、この受け入れも今より苦しいものだったかもしれないから。
「呼吸は止めると、隙ができます。なるべく止めないでください」
・・・そうは言われても、情けない話だが上手く呼吸ができない。
身体的には、FBIに入る為の訓練や、赤井さんに指導してもらった截拳道の訓練の方が何倍も辛いけれど。
精神的な辛さが・・・異常に高いからかもしれない。
「大丈夫、濡れてきていますから」
・・・それは、感覚から何となく伝わってくる。
彼の指がすんなりと動くこと。
そして、そこから粘着質な音が響いてくること、で。