第5章 笑顔と泣顔が行着く先※
「それに、反応は随分と良いんですね」
・・・リラックスしろと言う割に、何故こうも私の腹を立てるのだろうか。
それでも、今の状況で彼には敵わない。
ただ、このどうしようもない感情を外に放り出したくて。
怒りをそのまま表情に出し、突き放すように彼の体を押した。
「黙ってくださ・・・っい・・・!」
・・・が。
いつの間にか、倒れていたのは私の方で。
ベッドに沈んだ体を、沖矢さんは覗き込むように上に覆いかぶさって見据えていた。
「分かりますか」
・・・一瞬のことで、何が何だか分からなかった。
どうやって私がベッドに倒れたのかも、彼の問いの意味も、全部が。
「こうして貴女の冷静さは、簡単に失われるんです」
その中の一つの答えは彼がくれたけれど。
図星というのか、核心をつかれたそれに、思わず表情が固まった。
「自分の弱みは、なるべく見せないように」
・・・さっきとは、違う苛立ちだ。
つい数秒前までは、沖矢さんに向けた苛立ちだったのに。
今では自分自身へと変わっている。
「いいですね?」
「・・・・・・」
悔しい。
上手くできない、空回りしている、役に立てない。
そんな自分が、情けなくて。
彼の確認に返事すら、できなくて。
「そんな表情をさせたくて、言ったのではありませんよ」
・・・ズルいな、彼は。
やはりこういう事をする男は、口が達者なんだろうな。
私にもそのスキルがあれば、どれだけ救われただろうか。
「あ・・・ぅ・・・ッ!」
どうしようもない考えをしている一瞬だった。
その気を抜いた一瞬で、彼の手は下着越しに秘部をなぞっていて。
不意打ちだったせいもあり、無防備な声が部屋に響き渡った。
「反省でしたら、後でお願いします」
そうさせたのは他でもない貴方だが、という言い訳は飲み込み、情けない表情を隠すように近くのシーツを引き寄せ、口元を覆った。