第5章 笑顔と泣顔が行着く先※
「・・・っ、ん・・・」
安室さん・・・バーボンの時と、同じようで・・・違う。
疼きが、言葉では言い表せない侵食を見せていく。
それは、触れ合う前に沖矢さんが私の体の力を抜いてくれたからなのか。
そして所謂、快楽というのが・・・これに近いのだろうか。
「お、沖矢さ・・・ッ」
「呼び方、気を付けてくださいね」
それでも、何か背徳的な感情が、どうしても私の中で静止をかける。
してはいけないことを、している気分になる。
それは彼が耳に触れる度、増していくようで。
「それ・・・っ、嫌です・・・!」
耐え切れずに、思わずハッキリと言ってしまった。
「耳、ですか」
気付けば彼の服を掴み、しっかりとシワを作っていた。
呼吸も整っていない。
視界も瞼が塞いでいた。
自分の体をコントロールできていないどころか、思考すら回っていない。
とりあえず体を落ち着かせる為に深呼吸をしようと、空気を吸い込みかけた時だった。
「ひぁ・・・ッ!?」
嫌だと伝えた耳に、柔らかい感触と僅かな吐息を感じた。
そこに彼の唇が触れたことは分かったが、何故彼がそんな事をしたのかが分からなくて。
落ち着かせようとした思考は更にパニックを起こす中、彼は耳の周辺に何度も何度も、触れるだけのキスを落とし続けた。
「や、め・・・っ!」
ゾワゾワと、身体中に何かが走る。
それが最早、嫌悪なのか快楽なのかも分からない。
一度落ち着かせてほしい、という意味も込めて彼の体を押し退けようとするけれど。
止められるどころか、激しさを増すようにキスはいくつも降り注いだ。
「慣れなければ、意味がありませんので。それに・・・」
・・・それは、そうだけど。
けれど、初心者相手に飛ばし過ぎではないかと、言い返せない恨めしさを乗せた視線を、彼へと向けかけた瞬間。
「不快、という訳ではないみたいですし」
言い終わると同時。
唇とは違う熱量の柔らかい何かが、首筋をなぞるように這い上がった。