第5章 笑顔と泣顔が行着く先※
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「良いんですか?監視のことをバラしても」
コナンくんとあれから少しだけ会話をして。
特に実のあるものではなかったような気もするが、満足そうに帰っていったので、これで良かったのだろう。
それを沖矢さんと笑顔で見送り、ドアが閉じられた数秒後、私から笑顔が消えたのを確認してか、沖矢さんはそう尋ねてきた。
「もうバレてましたし、こうすれば私も彼を監視しやすくなりますから」
「強かですね」
赤井さんから任は解かれていない。
コナンくんの監視は、今までと同じように続けるつもりで。
でも結局、その意味も分からず任されているな、と自分のやり所の無さに視線が落ちた。
「・・・さて。時間もありませんし、ひなたさんが入浴を済ませたら始めましょうか」
「・・・・・・」
そう言いながら体を翻し、どこかへと消えていく背中を見て、やはり妙な感覚が脳を襲った。
・・・懐かしさ、というのか。
やはりどこかで会ったことがあるような感覚。
これは彼を探る目的も兼ねているが、全ての物事が何かを兼ね過ぎていて、最早何が本命なのか分からなくなりそうだった。
「ああ、今日は僕のチョイスで服を選んでおきました」
突然、消した姿を顔だけ覗かせると、少し楽しそうにそんな事をわざわざ伝えてきて。
「それはどうも・・・」
服装や下着に気を付けろと言ってきたくらいだから。
そういうものが準備されているのだろう、と脱衣所へと向かって。
確かに彼が言ったように、服は準備されていたが。
「・・・ッ!」
その横に、見覚えのある紙袋を見つけてしまった瞬間、体が先に反応してしまった。
それは以前、沖矢さんがわざわざポアロに来て私に渡した紙袋で。
恐る恐る中身を除けば、そこにはあの日と全く同じ光景があった。
「・・・・・・」
ため息しか出ない。
けど、こういう事は男性の意見を聞く方が早い。
従いたくない気持ちを押し殺しつつ、シャワールームへと足を進めた。