• テキストサイズ

【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第5章 笑顔と泣顔が行着く先※




「では、誰との約束ですか?」
「・・・コナンくんです」

ここで変に嘘をつけば、後が困る。
組織にいる頃は、平気で欺く嘘を吐いていたのに。

如月ひなたと安室透という関係上、この息苦しい会話は続けなければならない。

「コナンくん・・・ですか」

バーボンとウェルシュという関係であれば・・・こんな猫被りな態度も取らずに済むのに。

「でしたら妙ですね」

そんな事を脳裏で考えていると、彼は僅かに笑みの種類を変えながら私に横目で視線を送った。

何が妙なのか、と小首を傾げて彼に顔を向けると、車は赤信号でゆっくりと止められた。

「探偵事務所ではなく、ポアロで降ろして、なんて」
「・・・・・・」

・・・そんな事に引っ掛かりを覚えたのか。

相変わらず細かい人だ。
・・・彼らしい、とは思うが。

「言ったじゃないですか。忘れ物があるからって」
「何をお忘れで?」

・・・本当に私は今日、コナンくんと会うことができるのだろうか。

もう既に不安になってきた。

「エプロンです。洗濯しておこうと思っていたのを、忘れていて」

やはり私には、彼に取り入るなんて無理なのではないだろうか。

体より先に、心が拒否を示しているのに。

「成程。では、目的地まで送って行きますよ」

こんな小さなミスを、突きまくるような彼に。

「探偵事務所は、目的地ではないのでしょう?」
「・・・・・・」

最初から、探偵事務所で降ろしてくれと言っておけば良かった、なんて後悔は遅すぎるし、しても意味が無いけど。

「悪いですよ」
「いえ、車ですからすぐですよ」

それくらいしていないと、そろそろこの笑顔も引きつりそうだ。

「とりあえず、まずはポアロに向かいましょうか」

もう何を言っても無駄なようだ。

とりあえず今は彼に従うしかない。
あとは適当に目的地を言って降ろしてもらおう。

・・・降ろしてもらえるかは、今の所微妙だが。



/ 368ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp