第5章 笑顔と泣顔が行着く先※
その日の夕刻。
帰り際、事件を解決し終えた小さな探偵は、私の元へと駆け寄ってきて。
「ひなたさん・・・っ!」
「・・・どうしたの?」
伝え忘れた、と息を切らしながら私の服を掴むと、息を整えながら私の顔を見上げた後、周りをキョロキョロと見回した。
バーボンがいない事を確認しているのか。
ということは、彼に聞かれたくない話だということかと察し、私もコナンくんに近付くようにしゃがんで耳元に手を当てた。
「今日・・・これから沖矢さんのとこ、来られる?」
「・・・・・・」
・・・話の続き、か。
しておいた方が良いのだろうなとは思った。
けれど、行けば必然的に夜は・・・そういう事になるのかもしれない。
それも早めにしておかなければいけないけど・・・何故か体が逃げてしまっている。
「・・・分かった。遅くなるかもしれないけど」
そもそも、バーボンに帰してもらえるか不安な所ではあるが。
逃げる方法はいくらでもある。
「大丈夫。今日は博士の家に泊まらせてもらうから」
どうやら、工藤邸へ行けばそこから帰ることは難しそうだが。
「ひなたさん」
「あ、はい」
帰る合図を少し離れた安室さんから受け取り、手を挙げて応えた。
「・・・じゃあね」
また後で、とは言わない。
私には、この先の1分1秒だって生きているか分からないから。
手を振ってコナンくんに別れを告げると、安室さんの元へと駆け寄った。
「何を話されていたんですか?」
駐車場へと向かう最中、さっきまでの事を探られるように尋ねられた。
彼もコナンくんのことはやたらと気にしているようだったが、何か勘づいているのだろうか。
「別に、大したことじゃありませんよ」
探り屋である彼の隣にいるのは、流石に息が詰まる。
そして探りを入れられる度、首を絞められているような感覚になる。
それでも私は・・・この男に首を絞め続けられなければ、いけなくて。