第5章 笑顔と泣顔が行着く先※
「ジュニアの大会で優勝したらしいって、ポアロの店長に聞いてたからよ」
「そうなんですか・・・」
私達の会話を聞いていた毛利探偵が、そう解説するように話に入ってきて。
・・・確かに、彼ならそんな大会の1つや2つ、簡単に優勝していそうだ。
でも、それなら尚更、私は何の為にここへ?
「まあ、その直後に肩を痛めてしまいましたけどね。教えるだけなら支障はありませんよ」
「!」
さっきまで鈴木財閥のお嬢様・・・園子さんと話をしていた安室さんは、いつの間にか私の背後に立っていて。
沖矢さんといい、彼といい。
気配を消して近付いてくるのは癖なのだろうか。
それとも、私の感覚が鈍っているのだろうか。
「安室さん、よろしくお願いします!」
そう言いながら彼の腕に抱きつく園子さんを見て、確か彼女には彼氏がいたのでは、と思い返して。
私もそれくらい可愛げがあれば・・・良かったのに。
そんな事を考えれば、自然と視線も地面へと落ちていった。
「では、サーブから始めましょうか」
安室さんの言葉にハッとなり、テニスコートへと向かう彼らを見送って。
その最中、引かれた服の裾の先を見れば、コナンくんがどこか思い詰めたような表情で私を見つめていた。
「ねぇ・・・そろそろハッキリさせておきたいんだけど」
時々出る、彼の本性のような声色。
みんなの前では無邪気な子どもだけれど、1人になった時や気を抜いた時、今のような切羽詰まった時は、意識的か無意識か、よくこの声色が出ている。
「何を?」
視線を合わせるように腰を屈めると、彼は目付きを鋭くさせて私を見つめた。
これは・・・探偵の目付きだ。
「如月さんが、僕の敵なのかどうか」
「・・・・・・」
追求は彼の本能なのだろうな。
真実を求めずにはいられない。
探偵とは時に厄介な生き物で。
「敵・・・か」
ハッキリさせたいと言うからには、彼なりの答えは持ってきているのだろう。
でなければ、この目はできないだろうから。