第5章 笑顔と泣顔が行着く先※
「いいえ?見えません」
・・・私は何か間違った質問をしただろうか。
欲しい回答があった訳ではないが、その返答は予想とは大きく反したもので、つい戸惑ってしまった。
「だから勝算があると感じています」
この状況で、その勝ち誇った表情は、どうすればできるのだろうか。
その自信を少しでも分けて欲しい、とさえ思ってしまう。
「言いましたよね。どんな手を使ってでも、手に入れてみせると」
「・・・・・・」
そこまでして、組織に私が必要なのか。
それとも、バーボンが何かしらの理由で私を必要としているのか。
・・・それは、捕まってみれば、分かるけど。
「着きましたね」
長かったドライブはようやく終わりを告げ、伊豆高原のとあるテニスコートへと到着した。
「・・・でも、どうしてテニスなんですか?」
車内でテニスをすることはどうにか断ったが、断っても尚、彼が着替えを済ませてきたということは、テニスが本当に目的なのだろう。
観戦用のベンチに座っていた私の元へと戻ってきた彼を横目に、素直に質問をしてみて。
それを聞いた彼は笑みを深めたかと思うと、私から一度視線を外し、その視線の先を指さしてみせた。
「?」
その指の先を追うように視線を動かしてみると、とある団体客が目に入って。
ただ、その団体客に少し・・・いや、見覚えしかなかったせいで、思わずベンチから立ち上がってしまった。
「こ、コナンくん・・・!?」
「ひなたさん!?」
私の声に小さな探偵君も気付いたのか、お互い視線を合わせては過剰な程に驚いた。
正確には、コナンくんと毛利探偵、蘭さんや鈴木財閥のお嬢様まで来ていたが、驚きに変わりはない。
「ひなたさんも来てたんですね」
「え、ええ・・・」
蘭さんも、私がいる事は聞かされていなかったようだが。
鈴木財閥のお嬢様と安室さんが談笑しているのを見れば、ここに来た理由を概ね察した。