第1章 朝日は終わりを告げた
「・・・・・・」
遺体を見る限り、男は銃を自分で持っている。
それも両手で、自らに向けて。
そして女性は両手と腕を縛られている。
恐らく同じガムテープで、口も。
・・・ただ、これは。
「ひなたさん、大丈夫ですか?」
「え・・・っ」
床に落ちているタオルと、その下にある何かに気を取られていると、横から安室さんに声を掛けられて。
「な、何がですか・・・?」
そう聞かれる理由に、身に覚えがない。
彼の様子にも気を配りつつ小首を傾げると、数歩私に近付いて。
「かなり惨い状況ですから。女性には少々刺激が強いかと」
「あ、ああ・・・そうです、ね」
そう、か。
普通はそうだ。
でも私は残念ながら、ある程度の耐性がある。
・・・それに、私よりも配慮すべき人が隣にいると思うが。
「こういう状況、初めてではないので」
そう言いながら、一応現場であるトイレからは離れるように後ろへ下がって。
「私、梓さんに事情を説明してきます」
詳しくは把握できていないが、何が起きたのかくらいは分かる。
彼女も銃声は聞いていた為、一度梓さんへ伝えにポアロへと戻ると、念の為あの人にも現状をメールで報告した。
・・・あまり、首を突っ込まない方が良いかもしれないが。
それでもバーボンが関係しているかもしれない以上、放っておく事もできない。
梓さんに一通りの事を伝え終えると、再度探偵事務所の方へと戻って。
その頃にはパトカーも何台か到着していて、辺りには野次馬が集まり始めていた。
「ひなたさん!」
「コナンくん」
そんな中、彼は階段を登りかけた私へと上の方から声を掛けてきて。
見上げるように視線をやれば、彼はパタパタと慌てるように階段を駆け下りてきた。
「ひなたさんも、来てほしいんだ」
言われなくても行くつもりだったけど。
彼は彼なりの、私を連れて行く理由があるようで。
でも今はそれを追求せず、彼に手を引かれるまま、毛利探偵事務所へと戻ってきた。