第1章 朝日は終わりを告げた
とりあえず、2階の事務所に顔を出そう。
安室さんの様子も気になる。
特に何も無いとは思うが、妙な胸騒ぎがする。
「じゃあ、梓さん。お疲れ様で・・・」
杞憂であれば良いが、と笑顔を作って梓さんに最後の挨拶を仕掛けた時。
「!!」
2階から、パァンッと大きな破裂音の様なものが響いた。
「な、何?今の音・・・」
梓さんはその音に戸惑っている様子だったが、私はその瞬間から悪寒と冷や汗が止まらなかった。
これは、間違いなく。
「私、様子見てきます」
「ひなたさん!?」
間違いなく・・・発砲音だ。
・・・まさか。
まさか、あの男が。
そんなはずは無いと思いながらも、僅かな不安が大きくなっていく。
付けていたエプロンを素早く外し、カウンターに置いて走り出すと、勢いよく階段をかけ登った。
「・・・っ」
その最中、血の匂いが僅かにしてきて。
誰かが撃たれているのは確実だった。
心臓が大きく脈を打つ中、探偵事務所のドアを勢いよく開くと、目の前には蘭さんが立っていて。
「蘭さんっ、大丈夫ですか!?」
「ひなたさん・・・わ、私は大丈夫です・・・」
明らかに様子がおかしい彼女の体は、向かって右側・・・トイレの方へと向いていた。
その方向へと目を向ければ、毛利探偵の姿と、奥にはコナンくんと安室さんの姿もあった。
状況はまだ飲み込めないが、とりあえず毛利さんやコナンくんは無事なようだ。
・・・問題なのは。
「・・・ッ!」
その奥。
トイレの中にいるガムテープで拘束された女性と、口を大きく開けてそこから血を流す、男性の姿。
・・・血の匂いはこの男性、そして見るからにそれは即死だった。
「ひなたさん?」
「あ、ごめん・・・。発砲音がしたから、心配で・・・」
ゆっくりそこへと近付いていくと、コナンくんが私に気付き、声を掛けてきて。
とにかく、彼らに危害が無くて良かったが・・・流石にこの状況で、一安心とは言えそうにない。