第4章 どっちつかずの涙の雨
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「さて、今後の予定をお話しておきましょうか」
あれから、身なりを整えて沖矢さんが使っている部屋へ来るように言われて。
数十分後、彼の言う通りに部屋を訪れると、ベッドに座るように促された。
いきなりそこへ座らせるのかと、ため息が出そうになったが、部屋を見回せば部屋にはイスが見当たらず。
一応、仕方がなくここなのだなと、どうにか自分を納得させ、促された通りにベッドに腰掛けた。
「貴女の過去や経験については、彼から粗方聞いています。それを踏まえた上で、貴女をバーボンの元に送り込む準備をします」
・・・バーボン相手、か。
彼に焚き付けられるように、ああ言い切ってしまったけれど。
本当にそんなことが可能なのだろうか。
向こうは何年もの経験があるのに対し、こちらはただの1回だ。
・・・それも、ただ初めての経験を無くすというものだけの。
「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ」
「・・・・・・」
そんなつもりはないのだが。
彼に言われると、何故か癪だ。
「バーボンも、貴女相手では冷静ではないと思いますし」
そうだろうか。
いざその時が来ても、バーボンはいつものあの笑顔を私に向けながら、隙を狙うのではないだろうか。
・・・既に何度か、手を出されかけているのだから。
「さて」
話しておこうと言った割に、彼は早くも行動に移ろうとしていて。
それを口にはしないけれど、そういう雰囲気は体が敏感に察知してしまう。
「まずはここに座って頂けますか」
そう言って彼が座るよう指示したのは、ベッドの中央で。
受け入れたのは自分のはずなのに、その指示に従うのはどこか抵抗があった。
その抵抗感に抗いながらベッドの中央へと移動すると、彼に向き合うように座ったけれど。
「向くのは、あちらです」
何故か体をくるりと反転させられると、彼に背を向けるように座らされて。
明かりのない、月明かりだけが頼りの部屋にいる上に、無防備な背を彼に向けるせいで、どこか緊張感が高まった。