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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第4章 どっちつかずの涙の雨




「これを僕の口から言うことが、どれだけの苦痛が伴うか・・・貴女は分かっていないようですね」

・・・何も言えなかった。
沖矢さんの気持ちは、ずっと伝えられてはいたが。

本気にする事はどうにもできなくて。

でも今の彼の言葉を聞き、目を見れば・・・嘘でないことが、分かってしまった。

「それとも他に、何か悩む理由があるのですか?」
「・・・・・・」

理由・・・か。
あると言えば、あるのかもしれない。

私はずっと、赤井さんの傍で仕事がしたくて。
ずっとあの人の背中を追い掛けてきた。

これは憧れなんだと思っていた。

彼に体を預けた、その日までは。

「・・・いえ」

いや・・・スコッチに、体を重ねてほしいと頼んだあの日には、もう気付いていたのかもしれない。

これは憧れとは少し違う。

「ありません」

恋心という・・・やつなのかもしれない、ということを。

だから無意識に、あの人ではなくスコッチに頼んだ。
これは恋なんかではない・・・と、自分を律するように。

「改めて、貴女の答えを聞かせて頂いてもよろしいですか」

・・・あの人が、私を選んでくれたのなら。

「・・・やってやりますよ」

それに応える仕事をしなければ。

「あの人がいなければ、この世にいなかったんですから」

世の中に絶望し、命を投げ捨てようとした私を、彼は救ってくれた。

それからずっと、私を気にかけてくれて。

「あの人の為なら、何だってやります」

FBIに入ると言った時は、赤井さんに猛反対されたけど。
アメリカで死ぬ気で頑張って、ようやくあの人と一緒に仕事ができた。

それを守る為なら、バーボン相手にだってやってやる。

目の前のコーヒーを一気に飲み干し、沖矢さんへ挑戦的な視線を向けながら、ハッキリと言い切った。

「・・・良い顔です」

そう言った沖矢さんの表情は笑顔だったものの、良い顔とは言えないようだったが。

・・・それもそうか。

思いを寄せる相手に、別の男と寝る為の手解きをするなんて。
普通の人間なら言えるはずもない。




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