第1章 朝日は終わりを告げた
「・・・美味しい」
マスターから、料理は彼に任せても構わないと聞いているが、まさかここまでの腕だとは。
昨日も練習はしていたようだが、雑用を任せているだけでは勿体ない。
そんな事を、思ってしまう始末で。
「駄目だ・・・」
どうも最近は平和ボケしている。
ポアロに感情移入し過ぎてはいけない。
あの男が何を考えているのかは分からないが、料理を勉強してから潜入をしていても何らおかしくはない。
・・・私も、ここには潜入中の身なのだから。
それから黙々と食事を終え、片付けを始めた頃。
「!」
サンドイッチを届け終えた安室さんが、ポアロへと戻ってきて。
そういえば、エプロンを付けたままだ。
それを一度返しに戻ったのか。
「お疲れ様です。サンドイッチ、渡せました?」
「ええ、無事に。ついでに、依頼があったようなので毛利さんの仕事に同行させてもらいます」
・・・毛利探偵に同行。
その依頼、組織が仕組んだものではないだろうな。
「そうですか。気を付けてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
お疲れ様です、とお互い笑顔で声を掛け合うと、何処かへと向かう彼の姿を窓越しに見た。
・・・一応、あの人には連絡を入れた方が良いかもしれない。
私の仕事は、あくまでも江戸川コナンの監視だから。
そう思い、簡潔にメールでその事を連絡しておき、何もできない現状に溜息を吐いた。
ーーー
「そろそろひなたさん終わる時間じゃないですか?」
「ですね。これ片付けたら上がります」
安室さんと入れ替わる形で入った梓さんに声を掛けられては、時計に目をやった。
その日は夕方まで妙に長かったように感じる。
あれから、あの人に送ったメールの返事は来なかったが、報告の様なものでもあった為、気にはしていなかった。
「・・・!」
そんな時、ふと窓の外に目をやると、毛利探偵と安室さん、蘭さんやコナンくんの姿もそこにはあって。
ゾロゾロと2階の事務所に上がっていく様子を見ると、もう依頼は片付いたのだろう。
丁度私も仕事が終わる。
これからコナンくんと話をする予定もある事だ。
何の話が来ても構わないように、何となくその話に目星を付けながら、最後の片付けを終えた。