第4章 どっちつかずの涙の雨
本当はコーヒーすら苦手だ。
紅茶の方が好みではある。
けど、女な上にFBIの中では小柄な私があの人の隣にいる為には・・・そんな事まで気を配らなくてはいけなくて。
・・・ただでさえ、彼らにとって私の見た目は幼く見える外国人だったから。
少しでも、子どもっぽさを無くしたかった。
「・・・分かってますよ、どうするべきか」
確信をつかれたせいか、何故か言葉が零れるように奥底から落ちた。
仲間の一部の人間は、小柄な私を前に立たせようとしなかった。
きっと、弱く見えたのだろう。
相手から見ても、私は一番の標的にされやすい。
万が一、人質にでも取られたら堪ったものではないというのもあるのだろうけど。
だから、少しでも強くなる為にあの人に截拳道の手解きも受けた。
手が小さいからと、赤井さんは特別に私の手に合う銃まで用意してくれて。
スナイパーとしての訓練も彼にしてもらった。
残念ながら、ライフルの扱いは私には向いていなかった為、スナイパーとして動く事はできなかったけど。
「バーボン相手には、そういう手が一番だということも分かってます」
彼の隣でできる仕事がしたいと、組織まで入れてもらったのに。
結局最後は、スコッチの件で私も抜けざるを得なかった。
「でも、私が適任だと思えないです」
・・・もう少し、私が強ければ。
もう少しでも、何かの才能に長けていれば。
少しは、FBIにも赤井さんにも、役に立つことができたのに。
「下手をすれば、私たちの情報が搾取され・・・」
「貴女でないと、意味が無いのですよ」
昔の記憶と共に妙に本音が零れ落ちる中、それまで静かに聞いていた沖矢さんは、私の言葉を遮った。
「?」
どういう意味かと首を傾げれば、彼は体をソファーの背もたれに倒しながら、私に視線を向けて。
「バーボンが貴女に本気だということを赤井秀一が判断したから、貴女を選んだのですよ」
どこか寂しげな視線で私を見つめながら、彼はそう言ってみせた。