第4章 どっちつかずの涙の雨
「そうですか」
声色だけは私を突き放すように。
けれど、笑顔は貼り付けたまま。
彼は、私を覆っていた体を退かし立ち上がると、徐ろに背を向けた。
「するかしないか、判断は貴女に任せます」
「・・・・・・」
・・・私は、なんて捻くれ者なのだろう。
こうして突き放されれば、勝手に不安になるなんて。
「彼に確認して頂いても構いませんが・・・色々立て込んでいるようなので、連絡が繋がるかどうかは分かりませんよ」
その上、赤井さんに直接確認はできない、ということまで釘を刺されてしまった。
・・・結局私はどうしたいのか。
FBIの捜査官として、何をするべきなのか。
分かっているはずなのに、理解しようとはしていなくて。
一番・・・タチが悪い。
「今日は泊まって頂いて構いませんよ」
そう話す沖矢さんに目を向けると、彼はどこかへと立ち去ろうとしていて。
それを目で追っていると、出入口で彼は一度足を止めてこちらを振り返った。
「隣に彼がいる部屋では、休まるものも休まらないでしょうから」
彼にとやかく言えた立場ではないな、と心の中だけで溜息を吐いていると、去り際にそんな事を言い残してどこかへと行ってしまった。
「・・・・・・」
そうだ。
今あの家に帰れば、隣の部屋にはきっとバーボンがいる。
ミステリートレインで顔を合わせてしまったせいで、今度こそ私に何か問いただしてくるかもしれない。
赤井さんとも連絡が取れない中、考え無しに帰るより、ここで沖矢さんと・・・。
「・・・?」
・・・あれ。
沖矢さん、今・・・隣の部屋にバーボンが住んでいると、言った?
私は沖矢さんにその事を・・・伝えていただろうか。
「・・・・・・」
言ったような気もするが、酷く記憶が曖昧だ。
あの人と沖矢さんが繋がっているのを知ってしまったせいだろうか。
赤井さんが知っていることは、沖矢さんも何故か全て知っているような気になってしまっている。
・・・不思議な感覚だ。