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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第4章 どっちつかずの涙の雨




「や、やめてください・・・っ」

できる訳が無い。
沖矢さんなんかに、消せる訳がない。

覆い被さる彼を押し退けるように抵抗してみせるが、彼はビクともしない所か、ピクリとも動かなくなって。

無防備過ぎるそれに違和感を覚えていると、彼は自分の体を押す私の腕を、もう一度掴み直した。

「・・・赤井秀一でないと、ダメですか?」

掴んだ私の手を、彼は徐ろに自分の口元へと運んで。
吐息が掛かるような位置でそれを止めると、彼はそう問い掛けてきた。

「・・・っ」

そういう訳では無かったけれど、今の私の態度ではそう言っているも同然だった。

今までに私の体を預けたことがあるのは、あの人・・・赤井秀一ただ1人だけだから。

それも沖矢さんは、きっと知っていることで。

「その彼から、頼まれたのですが」

赤井さんでないといけない訳ではない。

赤井さんでも無理だったことだから、誰がやろうとこの過去を消すことはできない、と思っているだけで。

「私は・・・、聞いてません・・・っ」

本当に赤井さんの指示とは限らない。

そもそも、この男が何者なのかハッキリ分かっていないのに、そんな踏み切ったことをするなんて・・・。

「聞けば納得するのですか?」
「ッ・・・」

・・・納得、できるだろうか。
あの人の指示なら何だって従う覚悟ではいるけれど。

「赤井秀一の口から聞けば・・・受け入れますか?」

彼の言う通り。
あの人から言われれば、私は。

本当に・・・首を縦に動かすことが、できるだろうか。

「たまには自らの判断で動いては如何ですか」

掴まれていた手は再び自由にされながら彼にそう言われ、思わず強く神経に触った。

「沖矢さんにそんな事、言われたくありません・・・っ」

彼の言っていることは至極当然の事で。
私がただの我儘を言っているに過ぎないのに。

・・・私が腹を立てているのは、彼になのだろうか。

それとも・・・自分自身、なのか。




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