第4章 どっちつかずの涙の雨
「貴女を、任せると」
屈辱的な感情の中、彼は真っ直ぐに私を見つめながら、そんな事を言ってきて。
意味が理解できなかったはずなのに、頭の中は言われた言葉のせいで、真っ白になっていた。
「・・・どういう、事ですか」
任せる、という意味を知るのが怖くて。
あの人に見放されてしまったのではないかと、内心怯えていると。
「ッ・・・!!」
突然、大腿部に感じた感触に体は大きく震え、一気に全身へ鳥肌が立った。
「何、す・・・っ」
彼の手が、私に触れている。
その事実だけでも嫌悪のような感情でおかしくなりそうなのに、彼を退ける為に出した手も、足も・・・。
全てを彼に掴まれ阻止された事が、異常な屈辱を呼んだ。
「落ち着いてください」
沖矢さんに言われたくはない、と獣のような呼吸を繰り返していると、私の手や腕を掴んでいた彼の手の力は、ゆっくりと開かれて。
「こういう事を、任されたのですよ」
「・・・っ」
・・・頭のどこかでは、分かっていた。
けれど、あの人から言われたのだと思うと、頭が混乱してしまって。
「貴女が次にやるべき事をお伝えしましょう」
言わなくても分かっている。
「バーボンに近付き、自ら情報を得るんです」
彼が私に触れてきた理由も。
「今までのように待つのではなく」
私がこれから、どうするべきなのかも。
「貴女が、得に行くんです」
分かっているけど。
「言っている意味が、分かりますね?」
いざ、それが目の前に来ると、怖気付いて。
体が震えてくるようで。
それは。
「その為に僕が、貴女のトラウマを少しでも軽くする手伝いをさせて頂きます」
私のくだらない過去のせいだということも、沖矢さんは知っているようだ。
でも、彼にそれができるとは到底思えなくて。
あの人でも、できなかったそれを。