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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第4章 どっちつかずの涙の雨




「・・・シェリーは死んでいない」
「・・・・・・」

帰り道、何度も何度もあの時の光景を思い出してみたけれど。

赤井さんが列車同士の連結を外したことに間違いはない。
でもきっと、貨物車に乗った爆弾を爆発させたのは彼ではない。

「あの人は、そういう事をする人じゃありません」

彼ならきっと、どんな方法でもシェリーを救うはずだ。

爆弾が乗っていたことは一目瞭然だから。
それを無視して連結だけを外すことなんてしない。

そこには必ず、そうした理由があるはずで。

「やはり、絶対的信頼・・・ですか」

何か含んだような言い方をする沖矢さんに再び横目を向けるが、彼の視線はこちらには向いていなかった。

「・・・・・・」

・・・信頼、か。

少し瞼を伏せながら、沖矢さんの言葉を脳内で繰り返して。

「そんな綺麗な言葉では言い表せられませんよ」

忠誠だの、信頼だの。
私にはあまりにも、飾り付け過ぎた言葉だ。

「あの人に、頭が上がらないだけです」

まあ、赤井さんはその頭を下げなくても良いと言っている上、頭を下げている状態の私を嫌がるが。

「・・・私達が会ったのも、最初から赤井さんの指示ですか?」

そんな事より、と話を少し元に戻すと、彼はようやくこちらに笑みと同時に視線を向けた。

「いえ、最初は偶然ですよ」
「・・・・・・」

それ以上の答えが欲しかったのに。
彼は結局、それ以外の答えを示さなかった。

答える気も無さそうだったから、問い詰めもしなかったが。

「・・・それと、赤井秀一から新しい頼まれ事があります」
「?」

頼まれ事?
私には何の指示も無いのに。

そんな醜い嫉妬のような感情が沸く隙も無かったように思う。

気付けば私の体はいつの間にかソファーに倒されていて。
その上には沖矢さんがソファーに手をついて覆い被さるようにして、私を見下ろしていた。

「・・・っ」

この体勢に何が起きたのか、一瞬理解が追いつかなかったが。

何より気配無く、簡単に倒された事にショックを受けた。




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