第4章 どっちつかずの涙の雨
「まあ、彼も今は死んでいる身ですからね」
沖矢さんは赤井さんの立場をよく分かっているみたいだけど・・・本当にいつから知り合いだったのだろう。
今回はFBIとしての仕事ではなく、赤井さん個人が沖矢さんに協力した形だったのだろうか。
それとも沖矢さんが協力者だったのか。
いずれにせよ、何故私には何も連絡をくれなかったのに、沖矢さんには連絡をしていたのだろう。
・・・ズルい、なんて子どもみたいな事は言わないが。
一言だけでも、連絡をくれれば。
「・・・・・・」
・・・いや。
赤井さんは私だから、連絡を・・・しなかったのかもしれない。
役に立てない、私だから。
「赤井秀一に・・・幻滅しましたか?」
いつの間にか視線が床へと落ちていた私に、沖矢さんは徐ろにそう尋ねてきたけれど。
そんなもの質問にならない、と睨むようにその視線を彼に向けた。
「・・・しませんよ」
怒りを込めた口調で、彼にそう答えを言い放って。
赤井さんが私に怒りを向ける理由があっても、私が赤井さんに怒りを向ける資格がない。
ましてや、幻滅なんて。
「どうしてそんな事を聞くんですか」
沖矢さんは赤井さんにとって、どういう人なのだろう。
案外同じかもしれない、と沖矢さんは言っていたけど。
やはり彼も、FBIなのだろうか。
それとも、似通った別の部隊か何かなのか。
「連絡も無く、僕との関係を黙って、その上シェリーを目の前で始末したのは赤井秀一でしょう?」
幻滅される理由を彼は並べ立てたけど。
勝手に寂しくなる理由はあっても、幻滅する理由にはどれもならない。
「しませんね。それにシェリーの事は、あの人に何か考えがあってそうしたのでしょうから」
「ほう?」
・・・今思うと、私があの部屋を出る事までが、彼らの作戦の内だったのかもしれない。
「考えがあれば、人1人殺めた程度・・・どうでもないと?」
そう考えれば、赤井さんのあの時の行動も・・・何か意味があるような気がしてくるから。