第4章 どっちつかずの涙の雨
「・・・これで、貸しを無しにするつもりですか?」
「まさか。お詫びのようなものですよ」
お詫び?
「詫びるような事があるんですね」
「逆に、貴女には詫びてほしいことはないんですか?」
・・・成程。
これで私の答えは貰ったようなものか。
既に貰っていたような気もするが。
「つまり、今日赤井さんが乗車することを隠していて悪かった、と?」
「・・・・・・」
謝罪とはつまり、それを事実と認めた上でする行為だ。
「赤井さんは沖矢さん達と繋がっていると解釈して、構いませんか?」
はぐらかされていた答えは、回りくどい形で私の元へ出されていた。
それに間違いがないかと確認を取れば、沖矢さんは口角を上げて笑みを深めて。
「ええ、そうですね」
あっさりとそれを認めると、何故か私の傍へと腰掛けた。
「彼と、会われたんですね」
「・・・部屋から出たことは、謝りませんよ」
沖矢さんの指示に背いてはしまったが、結果そうして良かったとは思う。
そうでなければ、今回何が起きたのか分からなかったまま、ここに帰ることになっていただろうから。
「まあ、こちらも黙っていましたし。50:50という事で」
・・・どうぞと言ってきた割に、それで殴る話は無かったことにするつもりか。
まあ、最初から殴るつもりはなかったが、と小さくため息を吐くと、隣に座る彼へと横目で視線を向けた。
「赤井さんとは、組織の頃から繋がりがあったんですか」
「その辺りは、本人から聞いてください」
大事な事はいつも、はぐらかす。
できれば、沖矢さんの口から聞いておきたいのだけど。
「・・・聞きたくても、最近は電話すら出てくれないんです。それに、こちらが欲しいと言った情報は共有してくださいと言ったはずですよ」
「それは、得た情報は・・・という話だったと思いますよ」
・・・何故私は彼に、こうも丸め込まれてしまうのか。
今のは条件の出し方が良くなかった、過去の私が悪いのだけど。