第1章 朝日は終わりを告げた
「もう少し、サンドイッチの練習をしたいと思ってね。差し入れに伺おうかと」
・・・何を考えているのかはまだ分からないが、毛利探偵に危害があっても困る。
毒を入れるなんて安易な行動は取らないとは思うが。
「勿論、お代は頂かないよ」
「そ、そう・・・蘭姉ちゃんが喜ぶと思う」
コナンくんのその戸惑いは、単純な安室透の距離感の近さか。
・・・それとも、今後の行動をどうするべきか悩んでのものか。
「あ、そういえばひなたさん」
「ん?」
話題を切り替えるように、コナンくんは私の方へと向き直ると、真っ直ぐな目で私を見て。
「近い内に、話したい事があるんだけど」
これは、昨日の事と関係がありそうだ。
若しくは、昨日その話をしに来たのかもしれない。
「・・・いいよ。明日なら夕方までだから、それからでも良ければ」
「うん、じゃあ明日の夕方に」
安室さんも、本来なら梓さんと仕事をする方が良いと思うが、そうも言ってられそうにない。
なるべく、リスクは減らしていかなければ。
コナンくんは私との約束を交わすと、アイスコーヒーを飲み干して早くにポアロを去った。
「仲が良いんですね」
「そう見えます?」
ニコッと笑顔を作っては半分誤魔化して。
そしてコナンくんが飲み終えたグラスを手に取った瞬間、何故かその手を安室さんに掴まれた。
「僕が洗います」
そう言って笑顔を返されると、グラスはスッと手から離された。
「ありがとうございます・・・」
この男、本当に何を企んでいるのだろう。
とりあえず、毛利探偵やコナンくんに近付こうとしているのか、私が目的なのか・・・そこはハッキリさせておいた方が良いかもしれない。
ーーー
「では、毛利さんに届けてきます」
「はい。行ってらっしゃい」
次の日、彼は大皿いっぱいのサンドイッチを満足そうに持っては、2階の毛利探偵事務所へと向かった。
今日は休日だが、人出はあまりない。
私も早いが休憩をしようと少し長いため息を吐いては、彼の作ったサンドイッチを、賄いとして口に詰め込んだ。