第4章 どっちつかずの涙の雨
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結局、その後も車内で沖矢さんと合流することはなく。
再び工藤邸で、という指示だけが私のスマホにメールで送られてきた。
「お疲れ様です」
ミステリートレインを降りて数時間後。
途中下車した場所から、何故か各々ここへと帰ってきて。
「・・・・・・」
呆れているのか、疲れているのか。
自分でも、自分の事が分からなくなっていた。
彼に対して文句の一つでも吐いておきたかったけれど。
何から口にして良いか迷い、結局その言葉は喉の奥で詰まってしまった。
「一緒に帰ることができず、すみませんでした」
そんな私に、彼は気持ちの感じられない謝罪をして。
言葉が出てこない代わりに、表情には感情が分かりやす過ぎるくらいに、表に出てしまっていた。
「そんな顔も、愛らしいですよ」
それでも彼にとっては、笑顔を誘ってしまうもののようで。
もう色んな意味で敵わない、とため息を吐きながらソファーへと腰掛けた。
「・・・聞きたいことがあります」
「何でしょうか」
彼は、目の前に座った私に真っ直ぐ視線を向けながら、小さく首を傾げて。
何から聞いたら良いか迷う。
それ程に山程あったけれど。
一番、彼に確認しておきたかった事がある。
「赤井秀一は・・・沖矢さんの味方ですか?」
「・・・・・・」
今回の作戦に、初めから彼が組み込まれていたかどうかだ。
だとすれば、私が呼ばれた理由が少しは分かるような気がしたが。
「スコッチとは知り合いと伺いましたけど・・・ライとの関係は聞いていませんでしたよね?」
質問を重ねると、彼は掛けていたメガネを指でクッと押し上げて。
どこか空気を変えるような、改まった様子を見せた。
「どうして急に、そんな事を?」
・・・しらばっくれているのか。
本当に、何の関係もないのか。
けれど、シェリーの件について確実に関わった赤井さんと、その為に乗車した沖矢さんが関わっていないとは、到底思えなくて。