第4章 どっちつかずの涙の雨
「この爆弾で連結部分を破壊して、貨物車だけを切り離し、止まり次第僕の仲間が君を回収するという段取りです」
・・・おかしい。
「その間、君には少々気絶をしてもらいますがね」
聞き間違いでなければ、彼はシェリーを生きたまま組織に連れ帰ると言っていた。
けど。
「大丈夫。扉から離れた位置に寝てもらいますので、爆発に巻き込まれる心配は・・・」
「大丈夫じゃないみたいよ」
・・・そう。
今のままでは、大丈夫なはずがない。
「この貨物車の中、爆弾だらけみたいだし」
連結を外して、自分達の身を安全にしておいて、シェリーだけを確実に抹殺する。
そう、思っていたのに。
「どうやら段取りに手違いがあったようね」
もしかして・・・貨物車の爆弾のことを、バーボンは知らなかったのか?
だとすると、ベルモットと協力体制ではないのだろうか。
「仕方ない・・・僕と一緒に来てもらいますか」
「悪いけど、断るわ」
・・・バーボンは、シェリーを生きて連れ帰りたい。
ベルモットは、抹殺しておきたい。
そして当の本人、シェリーは・・・自ら死ぬことを望んでいるようだ。
「噂通りの困った娘だ。少々手荒く行かせてもらいますよ」
貨物車のドアが閉じられたことを音で感じ取ると、何となく外の状況が読めた。
このままでは、シェリーを生きて連れ帰ることは難しい。
そう、思っていた時。
「・・・?」
隣にいた赤井さんは、徐ろに私の肩を叩いて視線を向けさせると、自らの口元に人差し指を当て、静かにしていろとジェスチャーで再び伝えた。
それはもう言われなくても分かっている、と首を傾げて応えるが。
「!?」
彼の手に握られたものを見た瞬間、念押しされた理由をしっかりと察した。
・・・彼の手には、ハンドグレネードが一つ。
しかも安全ピンに指が掛けられている。
まさか、なんて思ってはみたけれど。
そうしない理由の方が見つからなくて。
目を見開いては、彼に本気なのかと視線で訴えた。