第1章 朝日は終わりを告げた
「早速、今日の夜なんていかがですか?」
「き、今日ですか?」
流石に、それは。
「すみません、今日はちょっと・・・」
あの人から、警戒は怠るなと言われている。
そもそも、この男は距離感が近過ぎる。
物理的にも、精神的にも。
「そうですか、残念。またリベンジします」
・・・この男から情報なんて搾取できるだろうか。
寧ろこちらの情報が毟り取られそうだ。
これでは本来の仕事も・・・。
「!」
持っていた皿を流し台まで運ぶと、手早く汚れを洗い流して。
そうしている間に、私としてはタイミングよくポアロの扉が開いた。
「こんにちは。ひなたさん、安室さん」
「コナンくん、こんにちは」
入ってきたのは、まだランドセルを背負ったままの彼だった。
昨日別れた時とは違い、いつもの様子で。
そういえば昨日、彼にも気になる質問をいくつかされたな。
・・・彼は何に気付いているのだろうか。
そして今日は何が目的で、ここに来たのか。
「何か食べる?」
「ううん、アイスコーヒーだけ貰ってもいい?」
カウンター席へと座りながら、彼は飲み物だけを注文した。
彼は小学生らしくないものを、よく注文する。
でもそれは決まって、蘭さんや毛利さんが居ない時だ。
彼らといる時は大体オレンジジュースを・・・彼が注文しなくても、蘭さんが注文しているから。
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
安室さんも、食べ終えた食器を洗って手を拭くと、私がコナンくんに差し出したアイスコーヒーを横目で見て。
「いつもこうして、ここに?」
「たまにね」
安室さんは彼に質問を挟むと、その何を考えているのか分からない笑顔をコナンくんに向けた。
・・・バーボンの目が、コナンくんに向くのはあまり良いとは言えない。
コナンくんとは、これまで以上に距離感を気を付けなければ、なんて思っていた時。
「そうだ。明日、毛利先生は?」
「事務所に居ると思うけど・・・どうして?」
安室さんはコナンくんへと徐ろに、そう尋ねた。
そういえば、毛利探偵の助手になったと言っていた。
やはり、一番の目的はそこなのだろうか。