第4章 どっちつかずの涙の雨
「・・・名探偵、ですか」
「まあ、今回は良いように使われている身ですがね」
コナンくん、とは言わない辺り・・・まだ怪しさが残るけれど。
話をしてみて、少なくともこの車掌は、組織の人間ではないと直感で感じた。
だからと言って、この車掌の言う通り味方かどうか判断はしかねるが。
「・・・貴方は、何者?」
逃げ場の無いここで変に探り合うのは、意味が無い上に時間の無駄だ。
相手が一般人ではないと明かした時点で、単刀直入に聞く方が正解だと判断し、そう尋ねた。
それから数秒、車掌に動きは無く。
ようやく小さく動かしたのは、口角だった。
「先に申し上げましたよ、敵ではないと」
「!」
言い終わるか否か。
車掌は自身の着ている服を掴んだかと思うと、勢いよく引き上げて。
体からそれらが離れた・・・ように見えたけれど。
車掌の手に服は無く、目の前にいるのも車掌ではなくなった。
「まあ、味方でもないかもしれませんが」
そう話す目の前の彼は、普通の青年に見える。
先程までの車掌とはまるで顔が違うことから、あれが変装だということは分かるが。
この姿が本当の姿かどうかは判断ができない。
「・・・今日は名探偵の仲間、ということですか」
「仲間なんて綺麗な言葉では、表せられないと思いますけどね」
掴み所がない人だな。
・・・沖矢さん程ではないが。
「何故私に声を掛けたんですか」
「これもお伝えしましたが、貴女が綺麗な女性だったからですよ」
そう言って彼は、先程と同じように薔薇を一輪出してみせた。
まるで、マジシャンのようだ。
「・・・・・・」
彼が私に声を掛けた理由は分からないが、私だと確信して声を掛けたのは間違いない。
でも、わざわざ声を掛ける必要性を感じられない。
仲間だから・・・警戒するなということなのか。
それとも、邪魔をするなというのことなのか。