第4章 どっちつかずの涙の雨
「・・・・・・」
・・・落ち着け。
あれは変装の可能性だってある。
実際、組織の誰かが赤井秀一の変装をして、FBIの周りを彷徨き、彼の死が本当かどうか確かめていたと聞いた。
今回も・・・そうかもしれない。
さっきの彼の顔には、火傷のような傷跡があった。
・・・そしてあの威圧感。
考えられるのは、ベルモットかバーボンの・・・変装だが・・・。
「・・・っ・・・」
・・・待って。
もし、そうだとして。
さっきの男は、赤井秀一の変装だったとして、だ。
彼らはそれを・・・誰に見せようとしている?
ここにFBIの人間が乗っている?
いや、そうだとしても、わざわざ車内で確認をするようなことだろうか。
それをするなら、もっと確実な場所があるはずだ。
それとも、確認したい相手がここに乗ると確実に分かっている上、普段は接触が難しい人物なのか。
そもそも、今回はシェリーが目的のはず。
・・・余程、確認したい人物がこの車内にいるのか、はたまた目的は別なのか。
「・・・・・・」
そこまで考え、ため息が漏れそうなのを必死に抑えると、今までの考えごと全部飲み込んだ。
・・・考えるのは後にしよう。
仮にさっきの人間がベルモットかバーボンだとしても、今の私にできる事は無い上、あの人と連絡が取れない内は確認のしようもない。
それに今は、車内の点検が先だ。
そう思い、足早に最後尾である貨物車の方へと足を進めた。
幸い、小さな探偵と出くわすことなく、最後尾までは来られたが。
「!」
幸いなのは、そこまでだった。
貨物を隠す為だと思われていた布を捲り上げると、そこにはびっしりと爆弾が隠されていた。
「・・・・・・」
思わず、ため息が漏れ出た。
ここにこれだけの爆弾があるということは・・・最後尾にシェリーを追い込んで、始末するつもりか。
被害を最小限にしようとするのは、彼ららしいと思うが。
・・・らしくない手だな、とは思った。