第4章 どっちつかずの涙の雨
「!」
4号車から5号車に入りかけた時、5号車側から聞き覚えのある声がしてきて。
車両を区切る扉を開ける手を、咄嗟に止めた。
「・・・・・・」
何を話しているかは、流石に車内の音と混ざって分からないけれど。
誰が喋っているかは判断できた。
・・・この声は、コナンくんだ。
そう早めに判断できたのは、沖矢さんの言葉があったからで。
薄々勘づいてはいたが、まさか、と思っていたのもまた事実。
でもその予想は今、的中に一歩近付いた。
彼もまた・・・沖矢さんの協力者として、乗車しているのではないか、と。
「・・・・・・」
声が遠のいたのを確認し、帽子を目深に被り直すと一息吐いて。
例えすれ違ったとしても、偶然を装えば良いはずなのだが、あの小さな探偵には何故か見つかってはならない気がしてしまう。
そんなことを思いながら、5号車へと繋がる扉を開け、客室の前を歩き始めた時だった。
「・・・!」
背の高い、帽子を被った男。
全身黒っぽい服装で顔はよく見えないが・・・歩いているだけで威圧感がすごい。
・・・組織の人間の感覚がした。
「・・・・・・」
すれ違いざま、顔だけ確認しようと、帽子を触り会釈する仕草で頭を軽く下げて。
視線だけをチラリと男に向けた瞬間。
「・・・ッ!!」
背筋が凍るどころではない。
全身、氷のように冷たくなるような感覚を覚えた。
・・・そんなはずはない。
そう、脳内では同じ言葉が繰り返されて。
でも自分の目に間違いは無かったと断言できる。
さっき、すれ違ったのは・・・間違いなく。
ライだった、と。
でも・・・彼は・・・。