第4章 どっちつかずの涙の雨
「ここが、僕達の部屋です」
車内のとある一室。
そのドアを開いては、彼はそう言って。
「・・・達、ですか」
「まあ、一室取れただけでも良しとしてください」
それはそうだけれど。
この狭い部屋で2人でずっといるのは、流石に息が詰まる。
組織が何かを仕掛けているのであれば、もう既に仕掛けているだろうし、早めに車内を見回った方が良い。
そう1人行動を考えながら、室内にあるベンチシートへと腰掛け、今だけ、と帽子を脱いだ。
「まあ、そこまで気負わずとも、僕の協力者も乗っていますから」
だからその協力者の正体を明かしてほしいのだが、と視線で伝えてみるものの、それをかわす様な笑みしか返ってはこなくて。
ここに来る前の車内でも尋ねてみたけれど。
人数も、どんな人物かも、何も教えてはくれなかった。
「!」
そんな会話をする内に、車内アナウンスで間も無く出発されることが案内された。
それを聞き終えると、私達は自然とアイコンタクトを交わして。
「では早速、お仕事をお願いして良いですか」
「・・・ええ」
その瞬間に妙な感覚を覚えながら、隣に置いていた帽子を被り直し、部屋を後にした。
「・・・・・・」
車両番号は外側の車体にしかなく、部屋にはアルファベットのみ表示されている。
その為か、車両には1人ずつ車掌が廊下の一番後ろで椅子に腰掛けていた。
迷子になる客も、少なくはないのだろう。
ただそれは、私にとって酷く厄介なことでも幸運なことでもあった。
車掌がいる為、客室を調べることは難しい。
けれど、この客室は外から鍵が掛けられない。
オマケに車両番号も無く、迷子になりやすい。
そうなれば、部屋に間違えて別の客が入って来た時、不審物があればすぐ騒ぎになりかねない。
組織の人間は無関係な人間も手にかけるが・・・そこまで確実性の無い方法も取らないだろう。
・・・だとすると、可能性が高いのは最前か・・・最後尾。
運転手を狙う可能性も無くはないが、ベルモットやバーボンが仕掛けたのだとすると・・・最後尾の可能性が高い。
そう考え、最後尾へと向かいかけた時だった。