第3章 チェイスの賢い始め方※
「シェリーだけではありませんよ」
「?」
彼の言葉に反応できないでいると、彼は掛けている眼鏡をクッと指で押し上げながら、話を続けた。
「もし、この情報がジンに渡っていたとしたら・・・どうなると思いますか?」
「・・・!」
・・・そうだ。
血眼になって探しているのは、ジンやベルモットだと聞いたけれど。
彼がこの車両に乗ると言った人物は、バーボンとベルモットだ。
ベルモットはベルモットの、ジンはジンのやり方でというのが組織でも目立っていた。
それは時に反発的なものもあって。
もし今回、ベルモットがバーボンと手を組んでいるとしたら。
「ベルモット達は車内で暗殺を計画していても、ジンは車内に毒ガスを撒いたり、車両ごと爆破したりするかもしれませんね」
・・・やりかねない。
例えそれに一般人や、仲間であるベルモットやバーボンが乗っていたとしても。
彼は敵仲間関係なく、邪魔者は排除する。
特にバーボンとは仲が良い方ではなかったようだから、可能性としては有りに近い。
「貴女にはそれを阻止する手伝いをして頂きたいのですよ」
そう言って、沖矢さんは私が押し出したパスリングを、私の元へ戻すように押し返した。
それを見つめながら、再び数秒考えて。
「・・・協力とは言えませんね」
だとしても。
私が乗るのはリスクが高い。
バーボンがポアロに来た目的も、コナンくんが連れ去られたあの日に見たベルモットの行動の意図も、何も分かってはいないのだから。
「ええ、貸しと考えて頂いて結構です」
それでも私をこのベルツリー急行に乗せようとするのには。
「・・・・・・」
きっと、別の目的があるのだろうな。
「・・・分かりました」
今、敢えてそれを追求することはしないが、結果によっては・・・。
「但し、私はベルモットにもバーボンにも見つかる訳にはいきま・・・」
「ええ、心得ていますよ」
皆まで言う前に、彼は言葉を挟んで。
言葉の先を聞く必要がないと判断したのか、はたまた。
「貴方のことは、ちゃんとお守りしますので」
彼の、言葉通りだから・・・なのか。