第3章 チェイスの賢い始め方※
「・・・ライと交際していたからですよ」
何故か少しの間を作った後、彼はそう答えて。
その瞬間、断片的にしか知らされていなかった情報が、私の中で1つになっていった。
「・・・・・・」
ライと付き合っていた組織の女性・・・宮野明美のことか。
彼女がシェリーの姉か。
ライと過去付き合っていた女性が始末されたことは知っている。
ライがFBIだとバレた為、組織に入る手引きをしたのではないかと疑われた・・・だからジンに始末されたのだと。
・・・あの人から、聞いた。
表側では、上手く処理されてしまったようだが。
「まあ、逃げ出したシェリーを、血眼になってジンやベルモットが探しているということです」
成程。
でもそれは、勿論。
「・・・始末する為、ですか」
「そういう事です」
ジンが探すとすれば、その理由しかない。
寧ろ、連れ戻す為・・・と言われる方が怖い。
「それで、そのシェリーがミステリートレインに乗って逃げる・・・と?」
何となくだが読めてきた。
そう表情で返すと沖矢さんは、何よりだ、とでも言うような表情で私を見つめた。
その表情を数秒見つめて考えてみたけれど。
納得や理解した部分はあるが、やはり自分の中で腑に落ちない部分がある。
持っていたパスリングをテーブルに置くと、数センチ彼の方側へと押し戻すように滑らせた。
「でも、私がこれに乗る必要ありますか?」
バーボンやベルモットが乗るのなら尚更。
私が乗れば、逆にリスクが増える。
私にとっても、彼にとっても。
デメリットしか大きくなるように感じなかった。
「おや、冷たいですね」
そう言いながら、彼はソファーの背もたれに体を預けて。
「シェリーが始末されそうなのに」
「・・・・・・」
私を試すような口調で話すと、その視線を真っ直ぐにこちらへ向けた。
そう言われても、私が加わった所でシェリー暗殺を手助けできるとは思えない。
下手をすれば私だって一緒に始末されてしまう可能性だって、あるのだから。