第5章 絶望
「千帆ちゃんはさ、何で烏野に入ろうと思ったの?」
ばしばしボールの音がするなかでのほほんとそんな問いをしてくる菅さんをちらりと見てまた、コートに視線を戻した。
「翔陽に【はね】をあげてしまったからでしょうか」
「【はね】?」
なんのことだかさっぱりわからない、と言う顔をする菅さんを見てクスリと笑みをこぼし、肩を擦る。
重たい瞼をゆっくりと落とし、またゆっくりと上げる。それを合図にゆっくりと口火を切る。
「私、肩を壊したんです。優勝後直ぐに」
(大丈夫、翔陽は練習に集中してる。ばれない)