第3章 エウリュディケ荘園
トランクの中から荷物を取りだし、整理する
『ビクターは、今までで話したことはないのか?』
素朴な疑問だ、表情だけで接してきたのだろうか
ナワーブ「俺は聞いたことねぇけど、話せない訳じゃないだろうしな」
あまり関わらない方がいいんだろうか…こういうことには
『……ここは本当に不思議だな、人を否めないし何故か言葉が出てくる』
ナワーブ「いいことなんじゃねぇの?損はしないだろ」
『ビクター、君は何か思うことはある?』
チラリとビクターを見る
ビクター「…ぇっと、ここの人達は…僕の事を必要としてくれる…」
鈴のような愛らしくきれいな声だった
『…必要とされるのは嬉しいだろうね、話してくれてありがとう』
そういうとビクターはまたにこりと微笑んだ
『それにしても、ビクターもナワーブも素敵な声をしているね』
ナワーブ「なんだよ、急に」
二人とも驚いてこちらを見た
『僕は美しいものは美しいと言う、何か気に障ったかい?』
ナワーブ「いや?不思議だなって思うだけだよ」
『僕はどうやら、君達と話すのは有意義だと感じているようだ』
全く不快にならないし、むしろ声を聞きたいと感じる自分がいる
ビクター「ぁの、僕はこれから…手紙を送ってもいいですか?」
『構わないよ、無理に話せとは言わないから…手紙楽しみにしてる』
あくまでビクターと話したいだけだという意味を込めて笑いかける
ビクター「毎朝届けますね」
ビクターは嬉しそうに微笑んだ
ビクター「あ、僕これからゲームなので…」
椅子から立ち上がりペコリとお辞儀をし、部屋を出ていこうとするその背中に
ナワーブ「おう、頑張ってこい!」
『健闘を祈るよ、どうか大怪我がないように…』
そう声をかけた、ビクターは振り返り
ビクター「はい!」
そう強くうなずいてゲームへと向かった
『ビクターって可愛いというか、愛らしいよな』
ナワーブ「何言ってんだ、熱でもあんのか」
『今まで純粋な人に会ったことがないからかな』
ナワーブ「おい、俺は含まれてねーのか?」
『堅気の雰囲気じゃないからね』