第3章 エウリュディケ荘園
『……………』
ゆっくりと目を開けると、小さく光が目に差し込む
『……寝てる、』
小さい寝息をたてながら眠る彼は、言動よりも幼い少年に見える
起こさないようにベッドを降り、トランクを持ってシャワールームに入る
『うわ………すご…』
昨日からも思っていたが、部屋の一室という割にはホテルのような大きさと設備の良さなのだ
『洗濯もできる……』
取り敢えず服を全部脱ぎ、昨日の服と一緒に洗濯機に入れ洗剤等を入れて洗濯を始める
トランクの中から着替えをまとめて出す、タオル等がバスケットに入っているのを確認し浴室に入る
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『……ふぅ』
身体がしっかり暖まったのを確認して浴室を出て、タオルで身体を拭き、服を着る
髪がベタベタだが、化粧品のひとつを置いて来てしまったと思いだし、取りに戻ろうと扉を開けると…
イライ「おはよう、セツナ。おや、髪が濡れたままだ。風邪を引いてしまうよ」
『おはよう、イライ。あの…昨日はすまなかった、面倒をかけた』
イライ「気にしないで、好きでしたことだから。それよりも、こっちにおいで。髪を乾かさないと」
そう言って、ベッドの上を軽く叩くイライ。大人しくタオルとドライヤーを持って座った
イライ「よし、じゃあセツナは私の足の間に……」
『良いけど、やりにくくないか?』
言われた通りにするが、なんとなくそう思う
イライ「大丈夫だよ、セツナは小柄だからね。それじゃあ乾かすよ」
『なんだ、小柄って。確かにイライ達よりは小さいけれど…』
そうブツブツと言うと、イライはクスクスと笑った
イライ「ふふ、細かいことは気にしない。ドライヤーかけるね」
少しの騒音と共に心地好いぬるま風が吹く、優しく髪を撫でられる
髪を撫でられる時に、イライの左薬指がキラリと光った
『………良いのか、イライ』
イライ「何がだい?」
『…いるんだろ?婚約者、丁寧に指輪までつけるほど大事なんだろ?』
少しの間どちらも口を動かさなかった、ふとドライヤーの風と音が止んだ