第7章 夏休みは任務です②~大人の階段登る編~
「一服付き合えよ、五条。」
「えーやだよ。屋上あちぃじゃん。」
「どうせ暇だろ、行くぞ。」
「せっかくシャワー浴びたのに、」
傑の部屋をある程度片付けて、オレが頬っぺたを抓っても起きない花子はアイツに任せて。無闇に触るなと言わんばかりのあの顔はかなり恐ろしかったので、“あとはごゆっくり〜”なんて言いながらオレと硝子は部屋を後にした。
硝子はオレの話を聞いていないのか、ズンズンと屋上へ続く階段を登って行くから、その背中に仕方なく着いていく。
「このイケメン様を屋上へ連れ出すなんて、」
「あ?五条が花子のことが好きだって、」
「あーオレも調度屋上行きたい気分だったんだよなぁ。」
なんて言うと、ニヤリと笑う硝子は、オレらと大差ないクズ野郎だった。いや、仮にもオンナの子に野郎はないか。いや硝子は野郎みたいなもんか。と1人頭の中で呟く。
「で、ときに五条よ。」
「だれだよ。」
「告(い)うのか?」
「んだよ、藪から棒に・・・・・、言えるわけねぇだろ。だから硝子も言うなよな。」
「貸し“ひとつ”な。」
と、硝子はご機嫌そうに笑う。やっぱりコイツもオレらと一緒にいるだけあるわな、とクズ野郎であることを再確認した。
「そもそも人のオンナに手を出すほどクズじゃねぇし。」
「相手が夏油じゃなくても?」
「いやそれは・・・、出すかもしれねぇ。」
「クズじゃねぇか。」
「友達のオンナに手は出さない、が正解か。」
「なーんだ、つまんねぇの。」
なんて言うけれど、そもそもオレの中ではまだ好きと認めたわけでもなかった。だって何度も言うが、オレの好みは綺麗で胸がたわわなお姉さんであって、そこに花子はちっとも掠らない。
「なんで好きだと思ったの?」
「なんでだろうーな・・・、」
実のところ自分でもまだ良く分からなかったのだ。花子が笑った顔は可愛いと思う。とくに傑といるときの笑顔は見たことないくらいに眩しいし可愛い。そんな事実を目の当たりにしたとき、胸の当たりがザワザワモヤモヤして、なんなら苛立ったり。
「好きってなんなんだろうな。」
オレの言葉は蒸し暑い夜の空へと消えていった。