第7章 夏休みは任務です②~大人の階段登る編~
『五条っ!!!!!』
「え?何?オレ?」
高専に着いて車を降りると血相を変えて息を切らしながら花子が走って駆け寄ってきたのは、傑じゃなくてオレの方だった。それに気付いているのかいないのかは分からないが、オレと花子の中間に割って入る胡散臭い笑顔を貼り付けたオトコ。
「そんなに急いで何かあったのかい?」
『いやっ・・・2人とも無事かなってっ・・っ、』
「んだよ、それだけか。」
「大丈夫。ちょっと時間はかかったけど怪我はしてないよ。」
すると花子は、良かったぁと気の抜けたような声で話し、その場にしゃがみこみ荒い息を整える。一体全体どれだけ走ったのかは知らないが、いつもより心配しているその顔の理由は何なのか。聞くより先に花子が答え始めた。
『ほら、昨日の夜・・・ケンカ?みたいになっちゃったから・・・傑がいるし大丈夫だとは思ったけど、』
「思ったけど?」
『呪力がブレでもしてケガしたり・・っ、』
そのあとの言葉を紡ぐのを花子は躊躇ったが、聞かなくても大方言わんとしてることは予想がついた。
「確かに、これでオレが死んだら花子ちゃんは自分責めて泣いちゃうよね。」
『っ!人が折角心配してるのにっ!』
「貧弱に心配されるほど弱くありませぇーん!」
「はぁ。また始まった。」
と大きくため息を吐いたのは傑で、オレの腕を殴りながらやんやんと喚き騒ぐ花子を丁寧にあしらう。
「なんだ、2人共ピンピンしてるじゃんか。花子が走ってたからクズが死んだんかと思って見に来たんだけど・・・んだよ。」
「「生きてるわ!」」
「そんなことより花子走るの早いのな、ちっとも追いつかなかったぞ。」
なんて整った息に、ポケットに手を突っ込んで登場してきたあたり、硝子は走ってなどいないだろう。いないだろうが、特に何も言わなかった。
一通り文句を言って満足した花子と傑がニコニコと何かを話しながら寮へと歩くその後ろを少し離れて、オレと硝子で歩く。
「オレもしかしたら小学生かもしれない。」
「どっかケガした?」
「いや違くてさ、」
そこまで言うと何のことか理解した硝子はニヤリと悪い顔をした。