第6章 夏休みは任務です①~お手並み拝見編~
「悟の何がそんなに気に食わないんだい?」
『別に気に食わないわけじゃないよ。』
「じゃあ、まさかとは思うけど・・・嫉妬・・・だったりして?」
『そんなわけない!!いくら傑でも』
怒るよ、そう言おうとしたときだった。
唇に生暖かい感触と共に、勢いよく傑にベッドに押し倒しされる。何度目かのその感触にはまだ慣れそうになくて。
ちょっと待って。
そう言いたいはずなのに、頭の横で両手を抑え付けられ、尚且つ傑が身体の上で跨っていて、抵抗することもできず。
だんだんに深くなるオトナなキスに少し息があがる。いつもより強引に口内で暴れ回る舌に絡めて、それに追い縋るのがやっとだった。
『・・っん・・す・・・ぐるっ・・っ、』
随分と長い間そうしていて、唇を離したときには名残り惜しそうにどちらのか分からない透明な糸が2人を繋いだ。薄暗い部屋の中でも怒ったような悲しそうな見たことのない傑の顔に少しだけ不安になる。
『・・・傑?怒ってる?』
「怒ってるように見えるかい?」
『・・・見える。』
「そういうつもりはないんだけどね。」
なんて笑う傑の笑顔はいつもより輪にかけて胡散臭い笑顔であり、じゃあどういうつもりでこんな荒っぽいキスをするんだ、と出かけた言葉たちは心の奥底に沈めた。
「どうしようもないくらいに私は花子が好きみたいだ。」
『な、なに、急に!』
「照れてる花子も可愛い。」
『もう揶揄わないでよっ!急にキスされてびっくりしたんだからね?』
「ごめんごめん。」
そう言うと、いつの間にくっついていた身体は離れ、2人でベッドに腰掛ける。なんとなく傑の体温を感じたくなって、傑の身体に持たれかかるように頭を預ける。
「花子から甘えてくるなんて珍しいね。」
さりげなく左手を腰に回した傑は、経験が豊富なのだろう。女の子が、私がして欲しいことを意図も簡単にやって退けてしまう。だからか今ここで抱いて欲しいと思ってしまった私は、どうかしている。
きっとこれさえも傑の作戦なのだろう思うと、私は傑には決して敵わないし、恋とはとっても難しいものだと思った。
(「そろそろ私は寝るね」)
(『・・・っ!』)
(「あれ?怒ってる?」)
(『怒ってない!おやすみっ!!』)