第6章 夏休みは任務です①~お手並み拝見編~
「それに、相手もオレもこれでOKなんだから別に良くない?」
『・・・、』
「花子に迷惑だってかけてないよね?」
『そうだけど・・・、』
歯切れの悪い話し方をする花子に更に苛立ちは募る。なんでこんなにもイライラしてしまうのか、自分でもよく分からなかった。
仮に相手が傑や硝子だったら、こうはならなかったと思う。きっと2人は何も言ってこない。なのに花子ときたら、この話題に触れてきたと思ったら、歪んだ瞳でオレを捉えていて。
・・・あぁオレたちやっぱり相性悪いわ。
硝子に言われた“五条も花子のこと好きなんだろ?”にそれは無いと今なら言い切れる。
『そうだけど・・・、それって、寂しくない?』
「・・・、」
『もっと自分を、』
“寂しい”
そのワードがオレの引金を引いた。聞かなくても分かる、その後に続く言葉はきっと“大切にしなよ”とかいうド正論に違いない。そんな言葉を今、花子からは聞きたくはない。
「うるせぇよっ!オマエには関係ねぇだろ?」
『関係ないことは、』
「は?偽善者ぶんなよ?お上りさんには分からないよなぁ〜」
『は?』
「それに加えてオマエ地味だし、さして可愛くねぇし。」
『今それは関係ないじゃん!』
「うっざ!あ〜ぁ。クソだりぃわ。」
花子が何か言おうとする前に、自分の言葉でソレを封じて。思ってもいないこと(でも多少は事実)を、花子が傷付くような言葉を敢えてペラペラと並べて、守ったのは自分の自尊心で。
どんどんと黒くなっていく感情をこれ以上ぶつけないようにと、立ち上がり自室へ戻ろうとしたときだった。
「悟〜!夜蛾先生から伝言!」
胡散臭い笑顔を貼り付けた傑が部屋から出てきたのだ。とてもじゃないが傑と仲良しこよしで話が出来る状態ではなかったが、夜蛾先生からと言われたら、それは無視できない。
「何?オレもう眠いんだけど?」
「明日の任務のことなんだ、ちょっと部屋に入れてくんない?」
あ、花子もいたのか、早く寝なよ、なんて言いながら肩を組むこのオトコは一体どこからオレの話を聞いていたのやら。花子は何も言わずに自室へと駆け込んで行った。