第6章 夏休みは任務です①~お手並み拝見編~
『彼女?』
「いたらこんな高専(とこ)にいねぇーよ。」
『じゃあ誰の?』
「何が?」
『香水。オンナ人の匂いするんだよ、五条から。』
「・・・、」
『前にもこういうことあって・・・でも、香水の匂いがね、・・・違うの。』
花子は伏し目がちに、そして言葉を選ぶように話す。とうのオレはと言えば心臓がドキリと跳ね、ドクンドクンと心臓の音がよく聞こえてきた。
傑と硝子にはバレていると思ったが、まさか花子にまで気が付かれているとは思わなかった。別に悪いことはしていない。ただ適当に可愛いくて胸の大きめなお姉さんがいたら声を掛けたり、掛けられたりして、その日限りで遊んでいて・・・。お互い同意の元で遊んでいるのだから、隠す必要もない。
それにこういうことは今に始まったことでもない。
なのになぜか花子の顔を見ると、悪いことをしているような気になってしまうのは、コイツが田舎臭くて初心で純粋だからだと思いたい。いや、そうに決まっている。
「オレクラスにもなれば、そりゃオンナも引く手数多ってもんよ。」
『・・・。』
「え、なに?説教?」
一瞬にして曇ったような顔をした花子に、苛立ちを悟られないようにしようと思えば思うほど、口調がどんどん荒く横暴になっていく。
『説教とかじゃないけどさ、』
「じゃあ口出してくんじゃねぇよっ!」
『っ、』
思わず大きな声を出してしまい、オレの声にびっくりした花子の肩がビクンと揺れた。申し訳ない、とも思ったが、一度出始めた言葉たちを胸の中に閉まって置けるほど、オレもできた人間ではなかった。
「そもそも、オマエらの方がよっぽど可笑しいと思うけどね。」
『え?』
「だって明日死ぬかもしれないんだぜ、呪術師なんてそんなもんだろ?」
『・・・っ、』
「それなのに、恋だ愛だ、惚れた腫れただのバカらしいと思わないか?」
愛ほど歪んだ呪いはない、これは自論であってみんなに認めてほしいとかではない。ではないけれど、それを否定しているような、その目に自分の感情を上手くコントロールすることができなかった。