第6章 夏休みは任務です①~お手並み拝見編~
『そっちこそ、ナニしてきたの?』
「別に〜。何もしてないけど。」
『ふ〜ん。』
「え?何?ヤキモチ?」
『んなわけ、』
五条は常にふざけた調子で話したり、わざと挑発したような話し方をするもんだから、負けじとついつい私も言い返してしまう。核心ついた話を五条の方は聞いてくるくせに、自分のことはそうそう話してはくれなかった。
それが寂しいとかはないが、サングラス越しに光る綺麗な眼とぶつかるとそれは以上は踏み込んではいけない気がしてならなかった。
「んで、花子は1人で何してんの?傑んとこ行かないのか?」
『部屋に入るなって言われてる。』
「なんで?」
『なんでって、・・・野暮なこと聞かないでよ。』
そう言えば、傑が部屋に入れてくれない理由を理解した五条はニヤニヤと(腹立つ!!)わざとらしく口元を手で覆う。余りにも我慢が出来なかったので、つい隣に座るオトコの二の腕を強めにパンチする。
『あれ、無下限で避けられるかと思ったのに。』
「いやいや、弱いヤツにソレは卑怯ってもんよ。」
『はぁ?』
「あ、オレンジジュース一口頂戴!」
私の怒りを買っておきながら、五条は私が飲んでいたオレンジジュースをひょいと奪いとり、一口と言ったくせに残っていた全てを一気に飲み干した。
「オレだったらすぐヤっちゃうね。」
『クズだね〜』
「クズって言われすぎてもはや褒められてる気がしてきたわ。」
『アホだね〜』
「はぁ?」
売り言葉に買い言葉、とはよく言ったもので。気が合わないのか私たちはしょうもないことですぐに言い合いになる。でもいつの間にか仲直りしいて、またいつのまにか言い合いをして・・・そんな繰り返しだった。
「あんまナメてると次の体術のとき本気でやるかんな?」
『全然余裕だし〜、こちとら鍛えてきたんで。』
「貧弱が生意気っ!」
そう言うと五条は私の頬を抓った。痛い、そう言おうと思ったときに、ふわっと香ったのは鼻を突き刺すような先程の香水だった。
『ねぇ、五条さ。』
「ん?」
『今日オンナの人と一緒だった?』
「何?ほんとに妬いてんの?」
ただの興味本意だった。
サングラスの奥の瞳はわざと見ないようにして問いかける。