第6章 夏休みは任務です①~お手並み拝見編~
「「「1級!?!?」」」
「そうだ。」
「それはなんでもいきなり過ぎじゃないですか?」
「分かっている。・・・夏油と同じことを私も言ったさ。でも上がそうしろと言い張った以上、一介の教師じゃどうにもならないこともあるんだ。」
「だから私が呼ばれたわけね。納得。」
「ったくこれだから頭の硬い年寄りは嫌いなんだよ。」
同じ呪術師とは思いたくもないね、と悟はあからさまに嫌な顔をした。なかなかに強い呪力を感じてはいたが、まさか1級の呪霊が1体それに加え2級程度の呪霊が2体いると聞かされたときは自分の耳を疑った。
故郷でどれだけの経験をしてきたかは知らないが、そもそも花子は圧倒的に実践が足りていない。それは誰が見ても明らかだった。
そして私は急に不安になって、怖くなった。
もしも花子に何かあったらどうしよう。怪我でもしていたら、酷い傷を負ったら、最悪命を落としてしまったら・・・。
そんな風に考えれば考えるほど一度感じた不安は、独りでにどんどんと膨張していく。
「・・・傑、らしくねぇぞ。」
「少しは高専で待ってる私の気持ちがわかったか、クズ共よ。」
「え、オレも入ってんの?」
こういうときだけ。
そう、こういうどうしようもないときだけ悟と硝子は息が合う。
「てか、硝子。いつも心配してくれてたの?」
「その顔うっざ。今度怪我しても治してやんねぇぞ?」
「大丈夫、オレ最強だから。」
気が気じゃない私の横で繰り広げられる日常(いつも)のおかげで、少しずつ冷静さを取り戻す。
「すまない。どうも花子のこととなると心配で。」
「傑って案外重いの?」
「案外?五条は今まで夏油の何を見てきたんだ?重いに決まってるだろう。」
「えーオレ無理ー。」
「大丈夫、悟。私も無理だから。」
そう返せば、幾分気持ちは楽になった。今私にできることは、花子の身を案ずる他には何もない。そう自分の胸に強く言い聞かせた。
そうして漸く帳の中に意識を集中し始めたその瞬間だった。
『みんなお待たせー!祓い終わったよ!』
3階の窓から身を乗り出して、手を振る彼女はほんの少しだけ顔に汚れをつけて、地上に舞い降りた。まるでその姿は天使のようだった。