第5章 アツい夏は青い春に決まってる
『ちょ、ちょっと待ってよ、傑っ!』
「随分待ったさ。それに、入るなと忠告したにも関わらずうかうかとオトコの部屋に入って来たのは、キミの方だろう?」
『そ、それは・・・ちょ、』
「・・・ごめん、花子。もう我慢できない。」
傑のベッドに組み敷かれた私は、どんなに抵抗してもその鍛え上げられた身体はビクともしなかった。諦めながらも“やめてぇー”と大きな声を出した、その時だった。
・・・あれ?
・・・・・あれ?
自分の身体は意図も簡単に起き上がっていた。
先程まで真上に跨がれていた傑の姿も見当たらなければ、今いるのは間違いなく自分の部屋のベッドの上で。点と点がひとつの線となって繋がるのにそう多くの時間はかからなかった。
『なんだ・・・夢か・・・、』
なんて夢を見ているんだ、と自分で自分につっこむ。そもそもだ。昨晩自室に戻ってから、なかなか眠りにつくことができなかった。
理由は火を見るより明らかだろう。
高校生だし、あんなことやこんなことをしたって別に不思議じゃない。それに加えて私たちは正式にお付き合いをしているのだから、そう言う男女の仲にだっていつかはなるだろう。
そう頭では分かっているはずなのに、致したくないというわけでもないのに、遠くない未来に起こるだろう事象に戦慄している。
ハジメテだからこんなことを思うのか、それとも私が臆病だからなのだろうか?真意は自分でも不明確だが、とにかく怖くて不安なのだ。
傑は怖くないのだろうか?
いや、待てよ、傑もハジメテなのだろうか?
いやいやいや、そんな訳ない。傑も五条もクズなのにモテるって前に硝子が言っていたし、それなりに経験だってあるに決まってる。
あれ?でもそしたらハジメテの私はめんどくさいのか?何かで見た気がする。そうなれば、さくっと捨てといた方のがいいのだろうか?
いやいやいや、何をバカな。
好きなのは傑で、身体を重ねるなら傑以外考えられないじゃないか。
・・・。
・・・・・・。
などとアホみたいなことを真剣に考えていたら眠れなくなって、気がつけば夜中の3時。やっとこ眠りにつけたと思ったらあの夢だ。
『・・・ダメだ。意識しすぎてる。』
散漫している脳内を一旦リセットするためにも、訓練でもして落ち着かせようと部屋を出た。